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税理士新聞 [平成14年11月15日]

神谷正紀が建設業の再建の手法および実績に関してのインタビュー記事

中小企業再建 会計人ネットワーク「チーム2007」/建設業者を生き返らす

 

 日本の建設産業は国内総生産の約13%に相当する約70兆円の建設投資を担い、全産業就業人口の約10%を占めるなど650万人の就業者を擁する基幹産業となっている。ただその一方で、建設産業の利益率はここ数年大きく低下。倒産件数も平成4年に2800件程度だったものが同13年には2倍以上の約5900件まで増えた。そこで、中小建設業の"再建"をキーワードに、会計人ネットワーク「チーム2007」を旗揚げした。会計事務所の多くが建設業者に関与しているだけに、旗揚げ間もない同ネットワークの動向に関心が高まっている。

 

 公共工事の減少や工事単価の抑制が進むなか、工事・建設市場規模の縮小は避けられず、昨年は佐藤工業をはじめ青木建設、日産建設、エルゴテックなど大手建設業者の倒産が相次いだ。もちろん、官公庁に依存した地方の中小建設業者を取り巻く環境も年々厳しさを増し、倒産件数も増え続けている。

 

 こうしたなか、建設業者を救済するため、建設業者再建コンサルタントとして活躍する神谷正紀税理士(長野県・上伊那郡)はこのほど、ベンチャー・テクノ・キャピタル(株)(代表取締役=是松孝典氏)とイプシロンコンサルティング(代表取締役=角田達也氏)の協力の下、中小建設業再建に特化した会計人ネットワーク「チーム2007」を旗揚げした。

 

 メンバーは現在募集中で、志を同じくする全国の会計人に参加を呼びかけている。
そもそも「チーム2007」という名称は、2007年までの期限付きで経営が傾きかけた中小建設業を再建しようという思いから命名したのも。「5年ぐらいをめどにある程度の中小建設業者を再建しなくては、日本経済が完全に立ち直れない。再建コンサルティングはダラダラとやっていれば良いというものではない」(神谷氏)ためだ。

 

 神谷氏自身、数年前から中小建設業者の再建に取り組んでいるが、現在は全国からコンサルティング依頼が殺到している。しかし、「私も、この仕事ばかりやっているわけでなく、一人で受け持つことができる件数には限界がある。他のコンサルティングと異なり再建指導は、結果として倒産するか生き残るかどちらかしかない。それだけに建設業者再建コンサルティングを始めてから、土日無しで仕事をしているが、今の私の事務所体制では一週に3件程度」と、片手間ではできないことを強調する。

 

 こうした理由から、志を同じくする全国の会計人とのネットワーク化を思い立った。
  現在、具体的な活動として考えているのが、インターネット上での情報交換、研修・セミナーを通じて再建ノウハウの研究、実際の支援依頼など。頻繁に集まることができないため、インターネットを活用し、WEB上に仮想本部を設置。ここから建設業支援などに関する情報発信などを行っていく。研修・セミナー情報などもWEBで告知する。

 

 また、実際の再建指導については、中小企業再建請負人として著名なベンチャー・テクノ・キャピタル(株)の是松社長らの支援を受けながら、会計人としてサポートできる会計、財務指導などを行っていく。つまり、外部の専門化とのネットワークを活用することで、「もち屋はもち屋」の仕事をしようとするスタンスだ。神谷氏は「建設業者の再建コンサルティングは非常に難しく、チームとして動かなければ対処できない。また、その専門家もその道のプロでなければ顧客が不幸になる」という。さらに、「中小建設業者は民事再生法に適しておらず、経営事項審査(経審)のことも念頭に置かなければいけない。民事再生法を利用すると地域での信用がなくなり取引がなくなる。また、負債処理をしようとして赤字を出してしまうと、経審の点数が下がり、場合によっては公共事業の入札が難しくなる。」

 

 そこで、会計人の役割として、財務、会計コンサルティングと金融機関の折衝が求められてくる。「最近、不良債権を増やさないように、金融機関は建設業者の融資をなるべく行わないようにしている。そのため、融資を打ち切らないようにどのように金融機関を納得させるのか、会計人としての力が問われる。もし、融資を止められれば、再建はほぼ不可能。金融機関の融資は、人間でいえば輸血。財務、会計指導は無駄なお金を外に出さないという事で、人間に例えると止血だ。つまり、大手術を行うにあたり、止血しながら輸血を行わなければ人は死んでしまう。企業の再建という大手術も止血、輸血ができて始めて成功する。会計人の役割は非常に重要というわけだ」(神谷氏)。

 

 神谷氏が手がけた案件で一番早く再建できたのは半年。それは会社の状況、手持ち資産があったなど、環境的に非常にいい状態だったためだ。「通常、経営者は最後の最後まで踏ん張り、もう手も足も出ない状況で再建指導を求めてくる。こうした状況では、急な改善はムリ。

 

 まず、マイナスの売上を改善、資金繰りが回せる状況にもっていき、それから売上を上向きにしていく。そうなると、運転資金3ケ月分ぐらい蓄えられる状況になるまで早くて1年、一般的には2年以上かかるかもしれない」という。

 

 しかし、すべての建設業者を再建できるわけではない。場合によっては、倒産の道を選ばせることもある。「経営者に再建したいという熱意とそれを続けていく精神力。さらに、資金繰りが上手く回るかなど経済的な問題も大きい」という。神谷氏も過去に倒産させた企業がある。「倒産させるにも"あのとき倒産させておいてよかった"と思われる方法を選択させなければならない。借金だけが残り、その後の人生を地獄にしてしまう倒産のもって行き方は最悪だ」。

 

 こうした、中小建設業者再建で神谷氏が蓄積したノウハウを提供しながら、全国で会計人が活躍することを期待して立ち上げた組織だが、入会するには再建コンサルタントとしての自覚を深めてもらう目的から、会計人の役割、スキルに関する2日間のガイダンスを受ける必要がある。1日目は、再建コンサルティングはどういった仕事なのか、2日目は、会計人として金融機関との折衝するノウハウなどが講義される。ガイダンス後には入会審査が行われ、審査にパスすると入会が許可される。実質、旗揚げとなる第一回目のガイダンスは、11月11、12日の2日間、東京・中央区のホテル銀座ラフィナートで行われる。

 

 

 

 

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